カテゴリー

無料ブログはココログ

他のアカウント

Twitter

« このタイミングでミストですか。 | トップページ | ダークタワー ブルーレイ&DVDセット発売 »

2018年5月15日 (火)

『ファインダーズ・キーパーズ』読了

キングの小説、"ビル・ホッジズ トリロジー(三部作)" の第2作です。

Imgp1307

兄(たぶんピート・ソウバーズ)と妹(たぶんティナ・ソウバーズ)が家の裏から水辺へ降りたところで水面に石を投げている構図。
全体に暗めの構図は、このハナシの紛失物(笑)である「トランク」を隠してある木の「うろ」を表現しているからで、おどろおどろしいストーリーの予感いっぱいです。
藤田新策氏の手によるイラストですね。

実は上巻と下巻の150ページくらいまでを読み終わるまでにはかなり時間を要したのですが、そこからはあっという間でした。
では「続きを読む」からインプレッションをどうぞ。

とりあえずどんなお話か全く分からないと困るでしょうから、本書のあらすじ的な部分を紹介しておきます。(本書カバー裏の記載)

 ≪上巻≫少年ピートが川岸で掘り出したのは札束と革張りのノートが詰まったトランクだった。父が暴走車によって障害を負ったピートの家では、毎晩のように両親がお金をめぐって喧嘩をしていた。このお金があれば、両親も、そして妹も幸せになれるに違いない。ピートはお金を小分けにして、匿名で自宅に郵送しはじめた・・・・・・
 そのカネは強盗モリスが奪ったものだった。アメリカ文学の最高傑作とされる小説を発表後、筆を断って隠棲する作家ロススティーン。その家を襲い、カネとノートを奪ったのだ。モリスにとって大事なのはカネだけではない。膨大な数のノート。そこには巨匠の未発表の文章が記されている。ロススティーンの小説に執着するモリスにとって、そのノートこそが何ものにも代えられない価値を持っているのだ・・・・・
 強盗と少年。徐々に近づいてゆく二人の軌跡が交差するとき何が起こるのか?スティーブン・キングがニステリーに挑んだ傑作『ミスター・メルセデス』続編登場。幻の小説に執着する犯罪者の魔手から、退職刑事ホッジズと仲間たちは家族思いの少年ピートを守ることができるのか?

 ≪下巻≫メルセデス・キラー事件の解決から四年。退職刑事ホッジズは友人ホリーを助手に、「ファインダーズ・キーパーズ探偵社」を起ち上げ、私立探偵として活躍していた。そこへひとりの少女から相談が持ち込まれた。高校生の兄のようすがおかしい。何か大きな悩みを抱えているようだと少女はいう。兄の名はピート。兄は犯罪に巻き込まれているのではないか。少女の訴えに深刻なものを察したホッジズは、ホリーとともに調査を開始する。
 妹の高校進学のためにロススティーンのノートを売ろうと決意したピートは、しかし、悪徳古書店主の脅迫に追いつめられてゆく。一方、出所を果たした強盗モリスは、獄中でずっと夢見てきたロススティーンの未発表原稿が隠し場所から消えていることを知り、猛然と行方を追いはじめた。
 家族を思う少年と、未発表原稿に執着する犯罪者-二人の軌跡が交差する時が迫る。ホッジズと仲間たちは果たして少年を救うことができるのか?『ミスター・メルセデス』で見事にミステリー作家の名乗りをあげたキングが、小説への愛と家族への思いをこめて書き上げたシリーズ第二弾。


では、103なりの感想というか考察を。

【作家を取り上げた作品】
ジョン・ロススティーンはアメリカ文学を代表する作家であるという設定ですが、キング作品には自身とかぶる境遇の作家を題材にした作品が結構ある。

1.ミザリー:映画化もされた超有名作。これも超人気小説の不出来を呪ってベストファン(笑)がもっと良い作品を書くように強制する恐怖小説。本作に似ているのは妄信的なファンが自分の欲求のために犯罪に手を染めるというところ。
まぁ、作家がかろうじて命を取り留めるのと、ハナっから殺されるトコロは違いますが・・・(苦笑)
P_20180514_215450_p

2.秘密の窓、秘密の庭:見知らぬ男が作家の家を訪れて「俺の小説を盗作しただろ!?」というオハナシ。ま、作家自身が危険を感じる小説なので、本作とはちょいと毛色が違いますが。映画化した時の主演はジョニー・デップだったんですね。
Img_0

3.ダーク・ハーフ:個人的に小説家を題材にして最怖だったのはこの小説。なんせ、本来双子として生まれてくるべき胎児が実は作家が葬った別ペンネームの作家として顕在化し、オリジナルの命を狙うというストーリー。スーパーナチュラルな要素も、ブラックジャック的ビックリストーリーも楽しめる。ジョージ・スタークの「ワル」な感じは若いキングだから書けたんだろうな。
610d1t7wsnl_sx335_bo1204203200_

ま、それ以外にも『呪われた町』のベン・ミアーズだとか、『リーシーの物語』のスコットだとか、『骨の袋』のマイク・ヌーナンだとか、『シャイニング』のジャック・トランスだとか・・・

で。
いつも思うのですが。
キング自身、こんなにベストセラー作家で他の追随を許さない立場にありながら、盗作・贋作・模倣・権利の剥奪・・・等々に頭を悩ませているということが、(彼にとっての)恐怖の着想点でありながらいつまでも囚われているポイントなんだろうな。

いや。キングよ安心してくれ。
*誰もホラーの中に宗教観を持たせてスーパーナチュラルな小説をこんな上手に作れませんって。(例えばグリーンマイルとか)
*誰もこれだけリアル生活の中にある固有名詞をこんなに活用してリアリティを出せる作家はいませんって。(様々な作品にて)
つまりそうカンタンに他の追随を許すような作品は書いていない。

結局キングは『こんなプロットの小説を書きたい』というよりも『こんなアイデアが(勝手に)降りてきたから、書かなくちゃ!』というスタンスで作品を創作し続けているんだろうな。そして、それが最強(最恐とも)なのだ。

【なかなかオハナシが進展しない・・・】
あ~、これもキング作品の特徴なんですが。
本作は各巻およそ300ページ。
しかし初めてホッジズが登場するのは上巻の200ページ過ぎてから。そしてそれは本作のメインストーリーとは直接関係しない『登場人物紹介』的なシークエンスでしかない。
もちろん登場人物の考え方や生活環境をことこまかにプロット建てしていって(かつ、伏線を散りばめながら)、描写をしていくのがキングの得意技なわけだが、それにしても下巻150ページほどで『細かい描写をしてきた各登場人物の現在の状況を端的に説明して一気にハナシを加速(例えるならカローラからフェラーリに乗り換えてアクセル全開みたいな)させる』暴挙に出る(笑)。
第三部 ピーターと狼のチャプター18からちょいと抜粋してみましょうか。

 午前のなかば。
 ホッジズは法廷で、精いっぱいお行儀よくふるまっている。(中略)
 リンダ・ソウバーズは、まっ青になって口もきけない娘を学校から引きとり、車で家へ連れ帰っている。(中略)
 ピートは三限の上級物理の授業中。目はさしあたりノートン先生にむけられ、先生はヒッグス粒子とスイスにある欧州原子核研究機構の大型ハドロン衝突型加速器についてまくしたてているが、ピートの目の奥にある精神はもっと家の近いあたりにいる。(中略)
 モリス・ベラミーは盗んだスバルを<虫糞館>の二ブロック先にとめ、歩いて引き返しているところ。(中略)
 トム・ソウバーズは少人数の不動産業者の団体にIBM撤退後の総合オフィスビルを案内しながら、さまざまな設備や特徴を指さして示したり、メンバーに写真をどんどん撮るよう奨励したりしている。(中略)
 ジェロームはホッジズのオフィスに予告なしで顔を出し、ホリーを驚かせたところだ。(中略)
 関係者でなんの活動もしていないのは、アンドリュー・ハリデイただひとりだ。(中略)

と、まあ、箇条書きでそれまでの流れとこれからの動きを予感させ、怒涛のごとくクライマックスになだれ込むというわけです。

Finders_keepers_2015

【ネット社会の恩恵】
本作に限ったことではないが、ここ10数年小説の中で分からないモノがあるとすぐにネットで調べます。
特に日常生活で使う雑貨や音楽、小説などを具体的に引き合いに出すキング作品の場合、それを知っているか否かで物語に対する『のめりこみ度』がだいぶ違ってくるので、ネットですぐ(今やスマホでさくっと)検索できる環境は読書の楽しみを大きく広げてくれる一助になっています。
本作ではピートの通うノースリッジハイスクールのサイトを実際に検索してしまいました。いや、リッカー先生がサイト内の『教師紹介』欄に掲載されているわけはないんですが。

Carnetsnoirsstephenkingalbinmichel

【み~んな大好きなキャラ & 超憎たらしい敵役】
ファインダーズキーパーズ探偵事務所の面々、ピートの家族、ジェロームの家族など、『良いモノ』はめちゃくちゃ魅力的な描写、敵役であるモリス・リッジはホント憎たらしい人間になっています。
そして加えて第三作への布石ともなっているのですが、ブレイディ・ハーツフィールドも「憎たらしい」描写はありませんが不気味な存在として描かれています。あ、ちなみに彼は第一作の「ミスター・メルセデス」の敵役ね。

20170603153402

【得意の急転直下】

結局、モリスとホッジズまたはピートが娯楽センターで対決するくだりはおよそ20ページで語られる。
ノートの行く末を思うとちょっと悲しくなるが、ま、ピートにとっては結果オーライなのでは?
そして事件終息後にはアイツとのシークエンスにより自作に対する期待をちょっとだけ盛り上がらせておいて物語は終わる。

ちなみにホッジズ三部作の最終作は本国で既に刊行されています。
題名が「End of Watch」というのですが、やはり「ミスター・メルセデス」の事故で被害にあった人を中心に物語が進展するらしいのですが、やはり気になるのはブレイディの登場の仕方ですね。
ネット上にはネタバレしている(日本語の)サイトもあるようですが、日本語版が刊行されるまではじっと我慢しておきましょう。
願わくば翻訳家の白石氏(彼が担当するとして、ですが)、文藝春秋の永嶋氏には「アクセルを目一杯床まで踏み込んで」頑張ってほしいですね(笑)。

Endofwatch9781501190377_lg

« このタイミングでミストですか。 | トップページ | ダークタワー ブルーレイ&DVDセット発売 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/160447/73486162

この記事へのトラックバック一覧です: 『ファインダーズ・キーパーズ』読了:

« このタイミングでミストですか。 | トップページ | ダークタワー ブルーレイ&DVDセット発売 »

2018年7月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31